高性能な家を建てるには、業界共通の「数値」と「指標」で比較しなければなりません。
特に家の弱点である「窓」と、施工精度を示す「気密(C値)」は重要です。
今回は、家づくりの基本となる住宅性能用語を解説します。
【比較表】営業トークを「共通の物差し」に変換する
ハウスメーカーの主観的なアピールを、数値で裏取りするためのチェックリストです。
| 知りたい住宅性能 | 営業トーク(例) | 共通指標 |
| 窓の断熱性能 | 最新のサッシで結露しません | 熱貫流率(U値) 樹脂フレームか |
| 断熱性能 | 冬も暖かく暮らせます | 断熱等級(6以上か) UA値・Q値 |
| 気密性能 | 社員大工が丁寧に作っています | 気密測定の実施有無 実測C値(0.7以下) |
| 地震への強さ | 等級3程度です | 耐震等級3 |
| 制震性能 | 最新の制震技術を搭載しています | 制震ダンパーの種類と搭載数 |
| 換気効率 | 深呼吸したくなる家です | 換気システム (第1種か、第3種か) |
💡数値を見る際の注意点
住宅性能の目標値は、お住まいの地域の気候(省エネ基準地域区分)によって異なります。
以下で紹介する「UA値 0.46」などの数値は、主に「5・6・7地域(東京・大阪・名古屋など)」を想定した、推奨ラインです。積雪地域などの寒冷地では、より厳しい(数値が小さい)目標が必要になるため、必ずご自身の地域の基準を確認してください。なお、ご自身の地域の区分がわからない場合は、こちらで確認できます。
窓の性能に関する用語(最大の弱点を守る)
新築から数年でも「内窓(二重窓)」を付けるリフォームが急増しているのをご存知でしょうか?
これは、新築時に窓を妥協した結果「新築なのに寒い」と後悔する人が多いためです。
後から多額の費用を払うなら、新築時に窓を強化するのが最も賢い投資です。
家の熱の出入りが最も激しいのは「窓」です。
家の断熱材をどれだけ厚くしても、「窓」の性能を妥協するとすべてが台無しになります。
夏に外から入ってくる熱の約70%、冬に家から逃げる熱の約60%が、実は「窓」からなのです。

- 熱貫流率(U値)
目標:U値1.0以下
窓全体からどれだけ熱が逃げるかを示す数値。数値が小さいほど高性能です。
日本の一般的な窓は2.3前後ですが、高性能住宅を目指すなら1.0以下を一つの基準にしましょう。 - 樹脂サッシ(オール樹脂)
窓のフレームがプラスチック(樹脂)でできているもの。
アルミは樹脂の約1,000倍も熱を通しやすいため、結露を防ぐなら「オール樹脂フレーム」が必須です。 - トリプルガラス(3層ガラス)
ガラスを3枚重ね、その間にアルゴンガス等を封入したもの。
ペアガラスよりも圧倒的に断熱・防音性能が高く、これからの高性能住宅のスタンダードです。 - Low-Eガラス(日射取得・遮蔽)
特殊な金属膜をコーティングしたガラス。
方角に合わせて「冬に熱を取り込むタイプ」と「夏に熱を遮るタイプ」を使い分けるのが正解です。
断熱・気密性能に関する用語(家の燃費を決める)
断熱等級(だんねつきゅう)
目標:等級6以上
家の断熱性能を1〜7で評価したもの。
2025年に等級4以上が義務化されましたが、快適な暮らしには「等級6」以上を目指すのが賢い選択です。
| 断熱等性能等級 | 概要・ポイント |
|---|---|
| 等級7 2022年10月新設 |
現行の最高等級。HEAT20 G3水準。冬の最低室温がおおむね15℃を下回らない水準。諸外国の高断熱住宅と同等レベル。 |
| 等級6 2022年10月新設 |
HEAT20 G2水準。ZEH+(更なる強化外皮基準)相当。冬の室温がおおむね13℃を下回らない水準。省エネ補助金の要件になることも多い。 |
| 等級5 2022年4月新設 |
ZEH・長期優良住宅の断熱基準と同等。2030年に義務化水準となる予定。 |
| 等級4 2025年4月〜義務化 |
2025年4月から全新築住宅に義務化。長らく「最高等級」だったが、現在は最低ラインに。 |
| 等級3 | H4年基準(1992年・新省エネ基準)相当。2025年4月の等級4義務化により、新築での建築は不可となった。 |
| 等級2 | S55年基準(1980年・旧省エネ基準)相当。無断熱の住宅と比べ約30%の省エネ効果。現在の新築では使われない水準。 |
| 等級1 | 断熱措置なし(無断熱)。S55年基準すら満たさない最低ランク。現在の新築では該当しない。 |
※ 断熱等性能等級は住宅品確法に基づく国土交通省の基準。HEAT20は民間団体(20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会)による独自基準。
UA値(ゆーえーち)
目標:UA値0.46以下
外皮平均熱貫流率。
数値が低いほど熱が逃げにくい。現在の断熱基準の主流となる指標です。
「UA値0.6(ZEH基準)」は、ハウスメーカーがよく使う数字ですが、実は今のトレンドでは「最低限の性能」です。
後悔したくないなら「0.46(等級6)」を目標にすることをおすすめします。
| 省エネ地域区分 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1地域 (名寄) |
2地域 (札幌) |
3地域 (盛岡) |
4地域 (長野) |
5地域 (新潟) |
6地域 (東京) |
7地域 (鹿児島) |
||
| 住宅性能表示 省エネルギー対策 |
断熱等性能等級7 | 0.20 | 0.20 | 0.20 | 0.23 | 0.26 | 0.26 | 0.26 |
| 断熱等性能等級6 | 0.28 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | 0.46 | |
| 断熱等性能等級5 | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | |
| 断熱等性能等級4 | 0.46 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 | |
| 長期優良住宅 | 断熱等性能等級5 | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | 0.6 |
| ZEH+(更なる強化外皮基準) | 0.3 | 0.3 | 0.4 | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 0.5 | |
| ZEH(強化外皮基準) | 0.4 | 0.4 | 0.5 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | 0.6 | |
参照:YKKAP株式会社資料をもとに作成
Q値(熱損失係数)
目標:Q値1.6以下
換気で逃げる熱まで含めた指標。
UA値よりも実際の「家の保温力」をシビアに反映するため、性能重視の会社がよく使います。
換気による熱ロスが少ない「第1種換気」を採用すると、Q値は劇的に良くなります。
なお、Q値は1999年に制定された「次世代省エネルギー基準」で使われていた断熱性能の指標です。
その後、2013年の省エネ基準改正でUA値に切り替わり、現在の省エネ法・断熱等性能等級ではQ値は使われていません。
気密測定とC値(しーち)
目標:C値 0.7以下
家にどれだけ「隙間」があるかを現場で測ること。
カタログ値ではなく実測値がすべてです。
C値が大きいと、計画的な換気が機能せず、冬に隙間風を感じたり、壁内で結露が起きやすくなったりします。
我が家の気密測定についてご紹介していますので、こちらからご覧ください。
省エネ基準地域(地域区分)
日本を1〜8のエリアに分けたもの。
自分の地域で必要な断熱スペックを判断するための前提知識です。
省エネ地域区分がわからない場合は、国交省のサイトやこちらのサイトで簡単に確認できます。
構造・換気に関する用語(安心と健康)
- 耐震等級3(構造計算あり)
目標:等級3
地震に対する強さの最高ランク。
「簡易計算」ではなく、「許容応力度計算」に基づいた等級3であることを確認してください。
耐震等級3の住宅は、地震保険料が50%割引(半額)になる大きなメリットがあります。 - ダンパー(制震ダンパー)
地震の揺れを吸収する装置。
繰り返しの余震から構造体のダメージを防ぎ、家の寿命を延ばします。 - 換気システム
目標:第1種換気
給気と排気を機械で行う仕組み。
外の冷気を室温に近づけて取り込む「熱交換型」にすることで、断熱性能を最大限に活かせます。
まとめ:ハウスメーカー選びは「主観」ではなく「数値」で
ハウスメーカーの営業マンが「暖かいですよ」「地震に強いですよ」とアピールしても、それはあくまで自社基準の評価です。失敗しない家づくりのためには、以下の3つの質問を投げかけてみてください。
- 「窓のU値(熱貫流率)はいくらですか? オール樹脂サッシが標準ですか?」
- 「気密測定を全棟で実施し、C値 0.7以下を保証(または目標設定)できますか?」
- 「耐震等級3は、簡易計算ではなく『許容応力度計算』に基づいていますか?」
「独自の強み」という曖昧な言葉を、これら共通の性能指標に置き換えることで、本当の意味で価値のある「高性能な家」が見えてきます。
この数値を確認することが、数年後の内窓リフォームや光熱費の高騰を防ぐ、最大の防衛策になります。

